糖尿病の治療薬は大きく分けて経口血糖降下薬による内服治療とインスリンによる注射治療があります。注射の手間などを考えると内服薬だけで済むに越したことはありません。ではどういう方がインスリン治療の適応になるのでしょうか。
インスリン療法は絶対的適応と相対的適応に分けられます。
絶対的適応とはインスリンが必ず必要な状態のことを指します。 インスリン依存状態や高血糖性の昏睡を来している場合、重症感染症、糖尿病合併妊娠などが含まれます。
これに対し相対的適応は必ずではないが投与した方が良い場合です。著明な高血糖(空腹時血糖値 250mg/dL以上、随時血糖値350mg/dL以上)があったり、経口薬のみでは十分に血糖が下がりきらない場合などが含まれます。
クリニックにおいても上記のような場合、外来でのインスリン導入を行うことがあります。ここでは外来においても導入が比較的容易なBOT療法について説明していきます。BOT療法とはbasal supported oral therapyのことで、経口薬に持効型インスリン1回注射を併用する治療のことです。
すなわちBOT療法のメリットは
◎インスリン製剤は1種類だけ
◎1日1回のインスリン注射
◎注射時間は1日のうちでいつもで良い。
◎外出時に携帯不要
以下に導入手順を示します。
導入初日 インスリン自己注射指導、持効型インスリン4-8E(体重に応じて)で開始、内服薬は基本的には継続(未治療で内服薬もない場合は内服薬開始+インスリン導入)、シックデイや低血糖についての説明 1週間後 自己注射の手技を確認 2-4週間後 インスリン量の調整、自己血糖測定の導入 3ヶ月後 コントロールが不良であれば治療を強化する(*)、コントロールが良ければSU薬を中心に内服薬減量を検討していく。 |
(*)治療強化について
BOT療法でも糖尿病コントロールが困難な場合は2つの方法があります。
①GLP-1受容体作動薬の追加
GLP-1受容体作動薬は低血糖や体重増加のリスクが少ない薬です。最近では持効型インスリンとGLP-1受容体作動薬の合剤も出てきており、両者あわせて1日1回の注射で済む製剤もあります。追加インスリン療法に負けない治療成績と言われています。
②超速効型インスリンの追加
食欲低下ややせ気味でGLP-1受容体作動薬が使用しづらい場合や1型糖尿病の可能性がある場合は超速効型インスリンの追加を検討します。1日2-4回のインスリン注射が必要となります。
日吉かもめ内科・整形外科クリニック 杉本 洋一郎