◯どんな病気ですか?
大動脈というのは心臓から枝分かれして血液を送り出す体の中で最も太い血管です。この大動脈は実は3枚の膜で出来ています。このうち中膜という真ん中の膜がさけてそこに血液が入り込む病気が大動脈解離です。60-70代の男性に多い病気ですが、最近は30-40代での発症も増えてきています。
◯どんな原因がありますか?
高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、睡眠時無呼吸症候群などが原因になります。マルファン症候群などの遺伝性の病気が関与している場合もあります。また激しいトレーニングをしていて急激に血圧が上昇し発症してしまう方もいます。
◯どんな症状がありますか?
動脈が裂けることにより、突然の激烈な痛みが胸や背中に起こります。また大動脈からは全身に枝分かれする血管がでており、枝分かれした血管まで裂けてしまうことがあります。その結果、裂けた部位に応じた症状が出ることとなります。頭に行く血管が裂けると脳梗塞症状が出ますし、おなかの血管が裂けると腹部の臓器障害を起こしますし、足に行く血管が裂けると足の血行障害を来します。上行大動脈という心臓から出た直後の血管が裂けた場合は心臓を栄養している血管まで裂けて、心筋梗塞を引き起こしてしまうこともあります。
◯どんな検査がありますか?
緊急でCT検査が必要です。エコー検査でも確認できる場合があります。採血検査ではDダイマーという血栓のマーカーやCRPという炎症のマーカーが上昇することが多いです。
◯どんな治療がありますか?
裂けている部位や症状によって治療法が異なります。血圧や脈拍を薬でコントロールするだけで経過を見られる場合もありますが、緊急の手術が必要になる場合もあります。手術としては人工血管を用いた手術とステントを用いた手術があります。かなり強い痛みがあるため、血圧・脈拍が上がらないようにするためにもしっかりと鎮痛剤を投与します。ベッド上での安静も必要となります。血管の裂け目が広がらないのを確認しながら慎重にリハビリを進めていきます。
原因はまだ解明されていないのですが、大動脈解離では胸水がたまりやすく、血中酸素濃度が低下してしまうことがあります。炎症の関与が考えられており、発症早期から炎症を抑えるようなお薬を投与する場合があります。必要に応じて酸素を投与します。
大動脈解離にならないためには、普段からの血圧管理が大変重要です。血圧が高めの方は、しっかりと家庭血圧を測り管理していきましょう。
日吉かもめ内科・整形外科クリニック 杉本 洋一郎