◯どんな病気ですか?
人間の心臓は、左心房・左心室・右心房・右心室の4つの部屋に分かれています。部屋と部屋の間には「弁」という仕切りがあり、これが心臓の鼓動にあわせて閉じたり開いたりして血液が逆流するのを防いでいます。心臓弁膜症には弁の開きが悪くなり血液を十分に送り出せなくなる「狭窄症」や、その反対に弁がしっかり閉じなくなって逆流を起こしてしまう「閉鎖不全症」があります。いずれも重症になると十分に血液を送り出せなくなり、その結果心不全を来すこととなります。4つの弁があり、それぞれに狭窄症と閉鎖不全症がありますから4×2で8種類の弁膜症があることになります。この中で臨床的に多く遭遇し、かつ問題となりやすいものは以下の4つになります。
- 大動脈弁狭窄症
- 大動脈弁閉鎖不全症
- 僧帽弁狭窄症
- 僧帽弁閉鎖不全症
◯どんな原因がありますか?
- 大動脈弁狭窄症:加齢性のものが最も多いです。その他先天性2尖弁などの先天的な疾患が原因のこともあります。
- 大動脈弁閉鎖不全症:加齢性、先天性2尖弁、大動脈弁輪拡張症、結合組織病、自己免疫疾患、感染症などが原因になります。
- 僧帽弁狭窄症:リウマチ熱によるものや加齢性によるものが原因になります。リウマチ熱の減少により最近では減少傾向です。
- 僧帽弁閉鎖不全症:僧帽弁逸脱症、加齢性、感染症、心筋梗塞・心房細動・心筋症により心臓が大きくなり結果的に逆流が生じる2次性のものなどが原因になります。
◯どんな症状がありますか?
息切れやむくみなどの心不全症状を来します。また心房細動などの不整脈を引き起こすこともあります。また弁膜症があると弁に細菌が付きやすくなってしまうことがあります(感染性心内膜炎)。そのため中等症~重症の心臓弁膜症のある方が、歯科治療などをする場合、抗菌薬の予防的使用を検討します。
◯どんな検査がありますか?
心エコー検査で診断します。またBNPという心不全のマーカーがあがっていないか採血でチェックします。重症で手術が必要な場合は経食道エコーといって胃カメラのように細い管を飲んで食道から心臓を詳しく見る検査をする場合があります。
◯どんな治療がありますか?
弁膜症そのものは自然治癒することはありません。軽症から中等症では、心臓の負担を取るお薬を使いながら経過をみます。弁膜症の悪化がないか確認するために、半年~1年に1回の心臓エコーのフォローが必要になります。
重症になると手術が必要になる場合があります。これまで、弁そのものを取り換える弁置換術や、弁を形成する弁形成術がメインでしたが、ここ最近はカテーテルを用いた弁膜症の治療も開始されています。
心臓弁膜症サイトもご参照下さい。
日吉かもめ内科・整形外科クリニック 杉本 洋一郎