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院長のコラム

アナフィラキシー 救命を阻む3つのハードル

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最近、アナフィラキシー(*)が話題になっています。ワクチンを打った後、急激に状態が悪化し亡くなられた患者さんがいて、原因がアナフィラキシーであったのかどうか、対応はどうであったのかというニュースです。今回の件とは別にして、実は、医師であれば皆アナフィラキシーに対応したことがあるかといえばそうではありません。また見たことはあってもアドレナリンという特殊な薬を自分の判断で実際に投与したことのある医師となるとさらに少なくなるでしょう。


一般にアナフィラキシーに対応するのは主に救急医です。また造影剤をよく扱う科(循環器内科や放射線科など)では、比較的多くアナフィラキシーに遭遇しますので、こうした対応に慣れていることが多いでしょう。救急科や循環器内科では、アナフィラキシー以外でも心肺蘇生時にアドレナリンを使用しますので薬を使うことにも慣れています。私自身は比較的多くこのアナフィラキシーに対応した経験があります。いずれも状況は切迫しておりましたが、アドレナリン投与にて事なきを得ることができました。


なぜアナフィラキシーの治療はハードルが高いのでしょうか?以下、私見となりますが、考察してみたいと思います。治療には3つのハードルがあると思います。アナフィラキシーと「判断」してアドレナリン投与を「決断」し、適切なお薬の量と投与経路を間違えずに速やかにお薬の投与を「実行」するという3つのハードルです。


アナフィラキシーだと「判断」することは簡単なのかというと実は結構難しい場合があります。ワクチン接種の際に、迷走神経反射といって、緊張や針を刺したことによりストレスで一過性に血圧が下がってしまったり意識を失ったりすることがあります。これらの症状はアナフィラキシーでも同様に見られることがありますので、迷走神経反射とアナフィラキシーのどちらなのか判断が難しい場合があります。


また「決断」にもハードルがあります。これは「アドレナリン」という薬の特殊性によるものだと思います。実はこのアドレナリンは、蘇生の際にも使う強力なお薬です。そのため、投与を「決断」するには薬に対するある程度の慣れが必要となります(普段使わない薬はやはり使いづらいものです)。


さらに「実行」に関してもハードルがあります。このアドレナリンというお薬は投与量・投与経路を間違えるとそれが原因で心臓に致死的な不整脈を起こしてしまうこともありますので注意が必要です。


ひとたびアナフィラキシーを起こすと、救命するために残された時間はそれほど長くはありません。分単位、時には秒単位であっという間に心停止に至ってしまいます。この短い時間内に判断決断実行が求められます。当院でも投与量、投与経路を事前に医療スタッフに周知し必要物品を準備し速やかに実行できるように致します。


(*)アナフィラキシー
アナフィラキシーはアレルギー反応の中でも命の危険のある特に重篤な状態です。じんましんなどの「皮膚の症状」、くしゃみ、せき、息苦しさなどの「呼吸器の症状」、目のかゆみやくちびるの腫れなどの「粘膜の症状」が多く、腹痛や嘔吐などの「消化器の症状」、さらには、血圧低下など「循環器の症状」もみられます。これらの症状が全身に急速に出現するのがアナフィラキシーの特徴です。厚生労働省のコロナワクチンによるアナフィラキシーに関するQ&Aもご参照下さい。


日吉かもめ内科・整形外科クリニック 院長 杉本 洋一郎

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