学校心臓検診とは?
平成6年12月より法律が改正され、小学校1年生、中学校1年生、高校1年生全員に心電図検査が義務付けられました。 学校心臓検診の目的は、心臓の病気の予防・早期発見し、適切な管理を行ったうえで、心臓突然死を予防することを目的としています。 また正しい指導区分を定め過度の運動制限や無用な生活制限を解除することも大事です。
検診のシステム
まず一次検診として家庭での調査票の記入、学校医による心音の聴診と心電図検査が行われ、疾患を出来る限りもれなく発見します。また心疾患がある子供には心臓病調査票などを通じて、適正に管理されているか確認されます。
二次検診以降ではレントゲン、心エコー、運動負荷心電図、24時間ホルター心電図などを実施します。その上で心疾患を正しく診断して、重症度を決定し適切な指導区分を決めます。また定めた指導区分を正しく実行させます。必要に応じて経過観察を行います。突然死の可能性のある疾患を発見しその予防対策を講じます。
学校心臓検診で見つかる病気
以前は先天性心疾患を発見することが学校心臓検診の主な目的でありましたが、 現在ではそうした先天性心疾患は学校心臓検診よりも前に発見されることが多くなってきています。一方、WPW症候群、心房中隔欠損症、QT延長症候群、肥大型・拡張型・拘束型心筋症などは学校心臓健診によって初めて見つかる可能性がある疾患と言えます。
WPW症候群は心臓の中に余分な電気の通り道のある病気です。そのまま経過を見られる場合も多いですが、心房細動という別の不整脈を合併していたり、心臓に器質的疾患がある場合は注意が必要です。
心房中隔欠損症は心房中隔という左心房と右心房を隔てる部屋に生まれつき穴があいている病気です。心臓にかかっている負担の程度と不整脈の有無により管理が異なります。
QT延長症候群は心臓の筋肉のイオンチャンネルをコードする遺伝子の変異によって心臓に不整脈を起こしてしまう病気です。突然死のリスクもあるので、運動制限が必要な場合もあります。
肥大型・拡張型・拘束型心筋症は心臓エコーによって診断可能です。致死的不整脈のリスクや心不全リスクがあるため、運動制限が必要な場合が多いです。
若年者の心疾患による突然死の原因として、その他に冠動脈先天異常、カテコラミン誘発性多形性心室頻拍などがありますが、これらの疾患は検診だけで見つけることは難しい場合もあります。
スポーツ選手の心電図
定期的な運動習慣は心血管系に良い影響を及ぼしますが、一方で競技における運動が心臓突然死のリスクを高めることも知られています。成人では冠動脈疾患が多いですが、若年者では先天性心疾患や冠動脈先天異常、心筋症、不整脈などが原因となります。一般にアスリートの方はアスリートでない方には見られない心電図変化が良く見られます。これが生理的な変化の範囲内かどうかが重要です。定期的な運動とは無関係な変化がある場合は心血管疾患の存在が考えられるので精査が必要になります。
日吉かもめ内科・整形外科クリニック 杉本 洋一郎