男女ともに40歳頃から性ホルモンの分泌量が低下してきて、様々な体調不良を引き起こします。これを更年期障害と呼びます。最近は男性の患者さんも増えてきていますが、これは増えたというより「男性にも更年期障害がある」という理解が広まってきていることがあります。
症状
身体症状としては、異常な発汗や血圧の変動、動悸や息切れ、のぼせや顔のほてり、耳鳴り、頭痛、めまい、関節の痛み、しびれ、手足の冷え、などを引き起こします。 精神症状としてはイライラや不安感、うつ、不眠などを引き起こします。また女性では生理不順、男性ではEDが見られます。
原因
女性の場合は、閉経前5年と閉経後5年をあわせた計10年間に女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が急激に減少することで症状が現れます。男性の場合は個人差が大きいものの、20歳後半から 男性ホルモン(テストステロン)の分泌が減少し始め、30代後半から40代で症状が現れることがあります。女性と比べその変化が比較的緩やかであるため、あまり気づないことが多いとされています。個人差があるため、60-70歳になって症状を訴える方もいます。
診断
男女ともに簡易テストが診断の一助になります。また血液検査では、性ホルモンの値やコレステロール値、血糖値、肝機能、甲状腺機能などを調べます。また、尿検査、血圧測定、骨量測定を行うこともあります。更年期とよく似た疾患の除外も大切です。
治療
女性の場合
①漢方薬
当帰芍薬散・加味逍遙散・桂枝茯苓丸という漢方を中心に使います。ホルモン補充療法と同等の有効性があるとも言われています。
②向精神薬
不安やうつ、イライラなど精神症状が強い際は、抗うつ薬や抗不安薬などの向精神薬を用いることもあります。
③プラセンタ
プラセンタとは、赤ちゃんのへその緒とつながり、お腹の中の赤ちゃんに栄養や酸素を運ぶ「胎盤」のことで、胎児の成長を促進させるタンパク質やアミノ酸、核酸、ビタミンなどが豊富に含まれています。プラセンタエキスは、ヒトの胎盤から抽出された有効成分で、肝炎や更年期障害の治療薬として厚生労働省の認可を受けています。ヒト胎盤を利用しているため、検出限界以下のウイルスが混入している可能性は完全に否定できませんが、これまでのところプラセンタ注射による感染の報告は無く安心して頂いて良いかと思います。45歳から59歳の女性の更年期障害に対しては保険適用になります。週2回の皮下注射を行い症状の経過をみていきます。
④ホルモン補充療法
女性ホルモンであるエストロゲンの減少を薬で補います。ただし極稀に血栓症を起こすことがあるのと、乳がんや脳卒中、心筋梗塞の既往がある方、重度の活動性肝疾患のある方はホルモン補充療法を受けることができません。
日本産科婦人科学会HPもご参考下さい。
男性の場合
①ホルモン補充療法
テストステロン補充のため2-4週間に1回程度でテストステロンの注射を行います。PSAという前立腺癌のマーカーが高い方は注意が必要です。
②漢方薬
補中益気湯や牛車腎気丸など、症状に合わせてお薬を選択していきます。
更年期障害では様々な症状があってお困りの方も多いでしょう。ホルモン補充療法や漢方薬などで症状を抑えながら、うまくこの時期を乗り越えたいですね!特定の症状に固執しすぎないことも大切です。スポーツやヨガ、ストレッチなども効果的ですから是非挑戦してみて下さい!
日吉かもめ内科・整形外科クリニック 杉本 洋一郎