「かかりつけ医」とはどういった存在なのでしょうか?
厚生労働省によれば
「健康に関することをなんでも相談できる上、最新の医療情報を熟知して、必要な時には専門医、専門医療機関を紹介してくれる、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師。」
と言われております。
この「かかりつけ医」制度がさらに具体化していきそうなニュースがありましたので本日はこのニュースについて考えてみたいと思います。
昨今、新型コロナウイルスの感染が疑われる発熱患者さんなどが、普段通っていた医療機関に診療を断られるケースが相次ぎました。これを受けて、厚生労働省は、「かかりつけ医」の果たすべき役割を法律に明記する方向で検討に入ったとのことです。
具体的な役割としては、外来患者への診療、休日や夜間の対応、在宅医療の提供、介護との連携などにどの程度対応できるかを報告し、都道府県が公表するとしています。また、生活習慣病などで継続的に通院が必要な患者さんは希望に応じて医療機関とかかりつけ医との関係を確認する書面を交わすことになるということです。
実は、現在でも田舎ではごく当たり前のように「かかりつけ医」が外来、在宅、夜間・休日診療などを行っていることも多いです。医師の負担は大きいのですが、患者さんにとっては自分の健康状態について日頃から様々に把握している「かかりつけ医」がいることは大変心強いものであろうと思います。
これに対し現在の都市型の医療は、診療科目の細分化が進んでしまい、循環器ならこのクリニック、呼吸器ならこのクリニック、糖尿病ならこのクリニックなど、、、同じ内科でも2、3のクリニックにかかられている患者さんが多いのも実情です。それぞれの疾患に対してはそれぞれのクリニックが責任を持つでしょうが、そうすると全体をまとめる責任者が不在になってしまうのです。
私がクリニックの名称に私の専門である「循環器」を入れなかった理由はここにあります。地域の開業医として、かかりつけ医として、内科医である以上患者さんに発生する全ての健康上の問題を診る責任があると思ったからです。このために開業までの3年間は、外来にて幅広い疾患を診ると同時に、外来に通院できなくなった患者さんにおける在宅医療や介護との連携についても知識と技術をさらに深めて参りました。
この経験を通して大事だと思ったことは、医師として基本に帰ることになりますが「”病を診る”のではなく“人を診る”」ということです。健康は体の様々な要素が関係しあって作られるものです。専門の細分化がすすんでいる都市型のいわゆる“病気だけを診る”医療ではなく、“患者さん一人ひとりを診る”医療を目指して取り組んで参りたいと思います。
日吉かもめ内科・整形外科クリニック 杉本 洋一郎