リウマチ性多発筋痛症(Fibromyalgia)は、主に肩や上腕、臀部や大腿部などの痛みを生じる疾患で、50歳以上の女性(男女比1:2~3)に多く見られます。痛みは急性に発症し、他に発熱や倦怠感などの症状が出ることもあります。「リウマチ」と名前はついていますが、「関節リウマチ」とは別の疾患です。
<原因>
原因は不明ですが、遺伝的要因、環境的要因などによる免疫系の異常ではないかと考えられています。
<症状>
肩や上腕の痛み、臀部や大腿部の痛み、こわばり、発熱、倦怠感などがみられます。
発症は比較的急性であり、疼痛は左右対称に出現することが多いです。
また、巨細胞性動脈炎を合併することがあります。
巨細胞性動脈炎では、側頭動脈に炎症が起き、こめかみの痛みや頭痛・発熱が出現します。目の動脈に炎症が及ぶと視力障害を起こすこともあります。
<診断>
主に症状や血液検査、エコーなどで行われます。しかし、他の疾患との鑑別が難しく、診断に難渋することが多い疾患です。
診断基準はいくつかありますが、以下にそのひとつである、欧州リウマチ学会(EULAR)・米国リウマチ学会(ACR)の診断基準(2012年)示します。
前提条件:50歳以上、両側の肩の痛み、CRPまたは血沈上昇
①朝のこわばり(45分をこえる)
②臀部痛または動きの制限
③リウマトイド因子陰性、抗CCP抗体陰性
④他の関節症状がない
⑤エコーで
1つ以上の肩関節に三角筋下滑液包炎or二頭筋の腱滑膜炎or肩甲上腕関節の滑膜炎
かつ1つ以上の股関節の滑膜炎or転子部滑液包炎
⑥エコーで両側の肩関節に三角筋下滑液包炎or二頭筋の腱滑膜炎or肩甲上腕関節の滑膜炎
悪性腫瘍に伴ってリウマチ性多発筋痛症様の症状が出てくることもあるので、悪性腫瘍についても調べる必要があります。
<治療>
リウマチ性多発筋痛症にはステロイド内服がとてもよく効きます。ステロイドは急に中止することができない薬であり、徐々に減量していく必要があります。
またステロイドには骨粗しょう症、白内障、緑内障、糖尿病などの副作用もあるため、副作用に対する対応も必要となってきます。
リウマチ性多発筋痛症の治療には、まず適切な診断が必要です。当院では関節エコーも行っておりますので、両肩関節・股関節周囲の疼痛でお悩みの方は一度ご相談下さい。
日吉かもめ内科・整形外科クリニック 副院長 藤崎 真理