◯風邪とは何でしょうか?
一般に風邪はウイルス感染によって引き起こされます。ウイルスは体のさまざまな場所に感染し、それがゆえにさまざまな症状を呈するのです。それに対し細菌感染は原則的に1つの臓器に1種類の細菌が感染します。ウイルス感染と細菌感染は両方とも「感染症」なのですが、治療法は大きく違います。風邪(ウイルス感染)の場合抗生物質は必要なく対症療法が中心となりますが、細菌性では抗生物質を投与する必要があります。つまり、風邪の場合は自分自身の免疫機構によって治癒を図るしかないということになります。
◯風邪に似ている細菌感染症にはどんなものがあるのでしょうか?
一つは細菌性副鼻腔炎があります。膿のような鼻水が特徴です。副鼻腔炎のほとんどはウイルス性と言われておりますが、強い症状が持続する場合は細菌性の場合があり抗生剤の投与が必要です。次に溶連菌性咽頭炎があります。強いのどの痛みが特徴です。溶連菌性咽頭炎では発熱の他、のどの奥に白苔と呼ばれる白い苔状のものが出現することがあります。また首のリンパ節が腫れることがあります。治療は抗生物質の投与になります。多くの場合 10日間と長い抗生剤投与が必要になりますが、合併症予防のため症状が軽快していても必ず抗生剤は決められた期間内服することが重要です。
溶連菌咽頭炎に似た病歴の疾患として、伝染性単核球症というウイルス性疾患があります。この疾患では全身のリンパ節が腫れたり、肝臓や脾臓が腫れておなかの張りを訴えることが特徴です。この場合は採血でウイルスの検査などが必要ですが、基本的にはウイルス感染症のため対症療法となります。
また咳が多く出る場合は細菌性肺炎の可能性があります。高熱で咳が続いたり、呼吸状態が悪い場合はレントゲンを撮る必要があります。肺炎の場合は特に入院が必要かどうかが大事です。血圧が低かったり、血中の酸素濃度が低かったりする場合は入院して抗生剤治療の他、点滴や酸素投与の必要があります。
上記の他、経過が長い場合、特殊な肺炎や肺がん、心不全や結核などの可能性もあります。
◯病気というのは「経過をみる」ということがとても大事です
その場では風邪なのか細菌感染なのか、診断がつかないことも時にあります。そのよう場合も時間がたつことで新しい症状が出てきて診断に結び付くことがあります。一度病院を受診して良くならないときは、必ず再度受診してみるようにしてください。
日吉かもめ内科・整形外科クリニック 杉本 洋一郎